irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

世界とわたし

まぶたに手を置いて
じんわりとその筋肉がほぐれる
後頭葉ではまだ花見をしているような騒ぎが続いているが
黒いお面の小人が一人ずつ
カーテンをひく係で 左右からわたしの脳内を走って
前頭葉まで暗幕をかけ始める

現実
ことばによってわたしは世界と微妙な距離を置く
あえて多義的なことばを用いて
わたし自身の輪郭をぼかす

前頭葉で小人が暗幕の端を重ね
おやすみと言う
世界じゅうで捧げられている祈りに反して
隣国の天気さえ知ることができない現実へ
嘆くわたしに、母親が子どもに言うような
やわらかい響きで
おやすみがこだまする

 

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