irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

オズの国

両性具有の股の間で飛行船になる夢を見た冬には雪が降り夏には嵐が来るように概念と固有の印象が一致するそんな名前を未来につけた 毎日、嘘のように塗り替えてあっという間だきっと子どもが大きくなれば今よりもっと優しく珈琲を淹れるだろうしっとりと重い…

追悼

寒々しい病室を抜けて小さな棺を抱えた春君はてんで変わってしまって過呼吸になるほどの涙がまだ止まらない打楽器が地響きのように鳴り金管が出鱈目に木管が発作のように笛を吹く名前の知らない楽器らが好き勝手にやっている間君は一睡も出来ない 持病の具合…

さざなみ

湖から海の音がする柵の内側は悦楽の入り江切りっぱなしの大きな岩の上に寝てジュースになったアイスクリームを垂らし金平糖のような夕陽に目を細める浅い呼吸で肺は外気の冷たさに縮むいつまでも融け合えない 融けたい君だけが融かしてくれるでなければ涙を…

intel相容れぬ

早くしなけりゃせわしないプライムタイムは選べないよりどりみどりが苦手の罠 サプリでキメたキラめきが消えた大きな人との圧迫面談小さくなって寝た 日にちを数えてた足らなくて吐いた頭打ちで終わったやれることを探してた明日には忘れてた 心臓は毛が生え…

火事

川沿いのうどん屋の上流で火の手が上がるリカバリー不能のメッセンジャーのやり取りうんと前のやつ返す前にそのまま 火に焼かれて死ぬそんな気持ちで生きていたい背中のケロイドを負う少女は重たい十字架雨が降ったら良かったのに昨夜はあんなにうるさく降っ…

たぶん一生

きらきら男子の日常には草も転がらない末広がりの夜更けには恋人とのロマンチックとあるべきで横目で嘲笑して次の娯楽を待っているリアリティー番組の終わり 軟口蓋に粘っこくからんだあの人の煙草のけむりが癌みたいにずっと戦い続けるものであること幼さの…

詩になる身体

どっちつかずの言葉が詩になるならいっそ何も知らないままで良い無知の断罪を晒して生きた証にしてみたり 主義主張のない両親の庇護の下で暮らしたいいつからかまぶたにできたシミをなぞって時間の逆流を思っている 両手の指より意識が多い三次元で生きてい…

スポッティング

喜びは補正しなくちゃ色を塗って汚れたら水で浮かせてうまくやれたら立体になる 思い出づくりが得意だ趣味が合わないのはそのせいだ歌を歌えばどの音も半音上げるから愛されない音痴だ 日めくりカレンダーめくるのが勿体ない五百回くらい同じところを回って…

劇場

舞台袖に催涙弾を投げ壁の穴に耳打ちをし笑い声が音響になる高架下からヒキガエルが飛び出しみんなが引いている どちら側からでも迫れる強力な観念持ち合わせた おどろおどろしい漬物を箱ごと炒めてすべて使ってしまった土曜日の郷土料理の鍋敷きになる踏み…

劇場2

横取りはしない主義でも横入りは無意識のうちによくしてる踊らないとおとぎ話にも出してもらえないから苦し紛れにやっている選んでいるから選ばれる一途な心は浮遊する仕事着は血で汚れているからカモフラージュの衣装と同じロッカーに入れられないのです

貴婦人の慰み

昨日の日付でまだ歌っている昨日の歌声でまだ轟いている雀が鳴くような鈴が鳴るような高い音の果てに舵を切るだろう 待たずにいると 長い昨日の日付のノートは捨ててしまった突発的に寄せ上がる高波の不安も砕かれる防波堤で一日を過ごしていく努力で ふくら…

音楽

本屋に行っても心は晴れぬ文字は絵としても機能しているので情報が多過ぎる 何が私を癒すろうか明かり灯すように種々の音楽をわたしが電波に合わせれば流れ込んで 意識高い系の意識を ゆるめて皇室もイスラム諸国も政治スキャンダルもHonestyを聴きながらと…

ムカデ

歌っている一匹のムカデ一日のスピードに心は追いつかず意味を求めない空白を求めたい 頭の中這っていく一匹のムカデ酔って 音楽のその向こう語彙が広がるための語彙で感傷が海のように満ちるのを取り返せない流れの中で漂うことだれかと手を取り合うための…

丸太会談

間違いなく世界史的な標榜でもだまされたから また 欺瞞に思えるにぎやかなメディアはさまざまの問題を提示してコマーシャルはどれも 脅し 欲のない日々に少しずつ殺されるテレビをつまみに少し酔ってバーチャルな顔立ちの女優にため息をついて何度もだまさ…

複製/運動/質量/視覚

平板に白黒のプリントとても重くて動かすことは出来ない間違ってることなどないと堂々たる押出しでいつからそこにあったんだろう 回転する時間小部屋の中で 平板が回る時間を遡る触れていく方向は一つであっという間に腕が閉じた めまいがするような逆さの感…

独り善がり

よく研いで人を斬った後は自分も胸に深く突き立てるんだよ そうして 罪を償うこと誓いを立てること突き立てた包丁を静かに引き抜いて創口は見えないようにすること どうでもいい事を喋るなプライベートに干渉するな裏切るなら近付くな言えない言葉を言わない…

溝の前

不幸を沢山積んだ取り返しのつかない一人よがりの言葉を沢山浴びた 言えなかった言葉が堆肥になって心がぶくぶく肥ってそれが脅しの眼になって存在しない他人の声になって 不幸は積み上がって喉はすぼまってそちら側には行かない という決別がまた私の首を絞…

逆立ち

分かりあうための言葉でどんどん間違える自分の刺し傷を見せるつもりはないけれど不格好な逆立ちをするからそれは見て欲しいわたしは、と喋り始めたら少しは声になる伝えたい言葉をどんどん間違えてもわたしは、と喋り始めたら多少はやり直せる教科書的な問…

オータム・エッヂ

私が誓いを立てている間 君は歓談していたんだろうかそれを思うと報われぬ距離をはかる 君との距離をはかっている 言ってはいけないことというのを言った制限された時間で いつも巧みに喋るから私は圧倒されるだけ 距離ははからないどう転んでも 埋め合わせ…

私じゃない苦しみを見に行く

糸を漬けた水が腐っていくそれは銃でそれは祈りでそれは日々の暮らし 一人よがりには バチが当たるから綺麗でないイメージも 寄り添ってはくれないから 懺悔で私じゃない人の苦しみを見に行く遠くまで 思えるだけ 遠くまで あったはずの食事とか紙とペンとか…

星座の具合

連絡網は ある 弓はいつも 引いている集中 集中 週末のシミュレイション レクリエイション欠けていく月のドラマ は 語らずしていい具合で縛られた 二十四時間 の 使い方 六分割弓は常に引いて ギリギリで 考え事は 禁止星座の具合で すれ違っても 自己主張は…

腐っていく / image

写真の中の生卵は腐らないし黄金の炒飯にもならない音のない世界で 言語の核は強い光を放ついつもそれを食べたいと思っているいつもそれを食べたいと思っている事象に逆らって 嘘をつくなという教えはあってもいいが騙しても良いと教えられたか 四角く切り取…

クリスマス・鍋の会

やあ終わるね終わるねという会話をなんのためらいもなく交わして奇妙な音頭で祝杯をあげる夜ごと静まるのに終電だけが賑やかで細い月は口をつぐんだまま笑っている 聖書を片手に麻酔科の部長が入ってくる私たちは私たちのささやかな問題について話し合う俗悪…

半熟の目玉焼きつくる半熟のおんな窓を半分閉めて後ろめたいことでもあるように光から隠れて食べる 半透明の心HBの鉛筆すりガラスに爪を立てた響きを反省する夜半フォークを立てると黄身が流れ出すフォークが流れる君が立っている 必然的な片割れではなくあ…

聖夜

肩の革張りの重みをまもろうとするごとくかたくなに腕をこばんだ口下手を夜ごとに恥じて鼻へ抜けていくアルコールの香り誤魔化しがきかないんだろう底から噴き出してくる欲望を運動機能が落ちたふるえる右手の先でする する する とペンのうねり一秒ごとに展…

戦後

新世界に神は必要ない神は簿記を始めたことし人魚から初めての政治家が誕生したがメディアに煽られ自らヒレを切り落とした私たちが東京に旅行したのはその頃で姉は動物園で熊を嫌がって虎を見たその夜薬膳鍋を食し私たちは浄化の術を学んだが「どうせすぐ月…

世界とわたし

まぶたに手を置いてじんわりとその筋肉がほぐれる後頭葉ではまだ花見をしているような騒ぎが続いているが黒いお面の小人が一人ずつカーテンをひく係で 左右からわたしの脳内を走って前頭葉まで暗幕をかけ始める 現実ことばによってわたしは世界と微妙な距離…

風邪

カゼ菌が喉頭蓋の上をさわさわうごく息をするたび 声門が開くたび気道に滑り込み私は驚く顔を真っ赤にして 目を見開いて咳き込む しんでしまう と思うこのまま咳が続いたら 息も出来ない身もだえしながら 弱い自分をのろうこんな思いをしているはずではなか…

矛盾

救急外来に運ばれた急性アルコール中毒の患者はカーテンに向かって唾を吐きちらす患者の飲酒量はビール中ジョッキ十杯で致死量の半分にも満たない足りなかったねと師長が毒を吐く私は師長が好きだった 年を言うといつも若いねと言われた二十歳から働いていれ…

八月三十一日

八月三十一日を前にわたしは失恋したのだったそういう告白をわたしはツイッターでしてなに食わぬ顔で揺れるジェリー状カラフルソーダの写真を添付した 本当は待っても待ってもわたしの順番は来なかったのだ公式ホームページの写真を加工して誰かのレビューを…