irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2011

遺伝子って知ってる

ものかなしいかなしい うそ さみしいさみしい根拠 結婚は遠く華やかな道にも思えず母譲りのビョーキで この先一生媚びてゆくのな細さを競う教室で ほしいのは嬌声じゃないし言い当てたり詰め寄ったり楽しそうだね冷めた目で見ている遺伝子って 知ってる知っ…

理性的な幻

この病院には看護婦が一人もいないと彼女は言った愉快な発想で掲げられた 有名な芸術家のポスターを見ながら病院のロビーできみは言った代わりというわけではないけれど いない君の妹がみえる と小泥棒の歩幅で縫い合わせた夜は精神世界を理想郷に変える き…

母性

目立たない顔をしていた私の中の母性は聞いていたとおりの 母性じゃなかった狂っているなら いっそ気がらくだったはずさ 体内時計も外側を知らない 残酷さで母性を 笑いものにしてきたのさ苦虫潰した 少女は今でもあの感触にふるえる喜びを感じながら滲みあ…

ひとり

縄張り意識で もう 負けるカラスになった電柱のうえで孤独一匹 餌を奪い合う兄弟たちを眺めている明日明後日には変わらない生真面目な低空飛行 群集に溶けこめない かわいそうなあなたは注目のまとになって そらへそらへゆけ朝霧のなか失ってゆく両の目とカ…

糖分過剰時代

今日も1カップのシロップを呑んだ わたしの習慣だ あまいと思っている一瞬は 快楽 世事に囚われない 動物としての至福にひたる夢も毒も 魅了されるのは そのあまさゆえならば このシロップ漬けのからだで みずからこれ以上 求めるものなどあるの見渡すかぎり…

恋人たちは醜い

深夜3時の格闘劇のたいていは男女の揉め事ひととしてのセツドを恋人たちは 忘れてたがいにののしりあっている勢いづいた口調はもはや酒やけの喉だといってゆるされる範疇ではないだろうわかっているわかっていないわかったわかって叫び声ひびくオレンジの氷…

この家には小さな死に神が住んでいるすれ違うときもあるがたいていは速やかに穏やかにはしっこに消える世の中のしくみにぞっとするわたしたちはみんな溺れる豚のようときどき氷点下の風が吹き抜けていくのに耐えてはかない真珠のみこんでごまかしごまかし生…

無口な貝柱

目の前のひとができるだけひどいめにあえばいいのにとおもうときこころがすみやかに暗幕をひいて深海の闇が広がっていくのをかんじる無明無音の舞台外側から聞こえる嘲笑や罵倒が感情の暴発をくすぐっているそれら感情の首ねっこを押さえ呑みこみ堪える作業…

昼下がり逃げるように家を出たお腹が痛かった遠くで雷が鳴っていたおじいさんが道に迷っていたギリギリのラインで信号渡れなかったiPodを置いてきたお腹がきりきり痛んだ

クレーター

とらわれないまま星の陰に包まれて追いかけっこで満腹になる水かけあそびに夢中になった幼い記憶も地殻に沈んできみの頬をつねった痛がるから夢じゃないんだって思ったのに、もう負けきみが笑うからぼくはまともに見れないでこの水を呑む間違い探しは簡単涸…

明かり落とせ

あかい部屋鼓動のすえに鳴る言葉 一刻一刻に脈々と受け継がれた螺旋を知る (思いのほかうつくしいひと葉を夢見ていた) 包まれていく包み焼きになるきみの火山で もういいよ明かり落とせ少し休むだけ

アラビアータ

秘密を抱えた少女はよそ者を忌む目つきで押し黙っているにこにこと笑っていても砂漠の花はけして揺れない 途切れなくこの道をつくる石は誕生と同時に交わされた永遠につづく契約を物語っている もうすぐ大喧嘩になるわよ、と肩を竦めて舌を出してみせた扉の…

環状線

やさしさが乗り込んだら すぐにわかる背後で そっと首に手を添えている わらい声は ポリエチレンの膜となって わたしの口、そしてつま先まで覆う定時帰りの悪童の横柄なふるまいさえ少しうらやましい定時帰りのわたしは茹だるような電車のなか浅い呼吸をして…

背徳の海

望ましい感情はとうに失っているのに奇妙な馴れ合いへの名残が鎖のように作用する四面を塗り潰すような サディスティックな感情がうずまく きみの化粧が剥がれて ぼくの片目がながれて互いに変わり果てていくのを楽しんでいる世紀末の子ども くちづけが本能…

癇癪持ち

いったいぜんたい奪うものもなくなった退屈顔のふたりは湿気でうねる髪を持て余す息ぐるしい 夜わたしたちはおそらく これ以上歪ませていくしか手段のないようだ 蛇口ひねったって 子どもできないじゃん きみの命きみ自身否定する人間交際の ひずみから汲み…

レジメンタル・ストライプ

臆病者に誓いはいらない酸性雨に蕩けてく案内役紳士の冷笑シルクハットには オウムの羽根飾りつけてても ネクタイには小さなライオンの眼が、ぎろり、か一歩踏み込めば三日前の水溜まりが ひちゃひちゃと何かいざなう裏通り びい玉の眼をした子どもは手を伸…

わたしには降水確率を確かめる習慣がない

生温い風と むらさきの唇 先週から降り続く雨の うす気味悪さにふるえている(手のひらの血豆がつぶれた) 欲のない日々に少しずつころされている気がする単語の積木はつまらない一人あそびはつづかない雨が降っている場所はどこも なにがなに色をしているか…

カエルの子

毎日、飽きもせず石投げ競争に躍起になる 橋の上 二人きり得意げに跳びはねたら蹴飛ばして、突き落とす泥まみれ きみの顔ざまあ 穏やかな気持ちを 指折り否定して ゼロになったら、僕の勝ち。 しってるさ明日も、夕方、繰り返す。 進歩ないって きみにだけは…

同胞

赤いお皿のうえに流れた血を知らないきみは今もわたしが産み落とす一つの罪悪に似ている きみ自身なんの罪もなくとも彼らの一存で きみはきみとして機能しない ならば認めない存在として罪だと名付けられるの だろう(思えばわたしはきみのことを一つも知らな…

散る散る

橙の花まっすぐに伸びた背きみの呼び鈴 小猫のように野原を駆けていく芳しく鼻をつくかおりと そのしゅんかん 千々に乱れる このあつい恋情の一幕も わたしだけに与えられたものではない彼らに背を向けて ふたりひそめきあった 草の根の いろはも きみが放っ…

砂のない国

スケッチブックには飛行機雲を書いた きみの地図は流された しけた討論 正義の定義はいたちごっこする絶え間無く白波立つのを見ている なまがわきの唇 間延びした声 細いのどから風に乗る奇妙な歌は滑稽こそすれ今はいとしい(きみは砂上の城にひれ伏した鎮…

かわいい人

狂いなくわたしは進んでいたし通り過ぎたと思っていた ひとつの陰ひとつの焔 蘇って、忽然 明日の居場所を問う きみを見ていると また愛しそうになる砕けた電子の奥に霞んでいる輝きを ひらわないように気をつけて、わらって美観している きみはいつまでも …

歩く

雨上がりのぬかるんだ道に靴底があまく沈む池を眺むきみの小さな横顔 頬を染める輪郭のつかめないぬくもり前線はこれから少しずつ わたしたちの陰を溶かすだろう思うにその先が かみさまのくに かえろう足跡は確かに わたしがここに存在する理由を連れている

悲劇と言うかい

親不孝者、と さも恐怖そうに言った この親不孝者、と ヒステリックな金切り声を浴びながら わたしはせっせと頭の中を埋めていく"言葉どろぼう!"と罵られている妄想にすり替えて まさか火曜日の惨状を錯覚として思い込む なんでどうしてと嗚咽とともに疑問を…

墓場ゆき

それじゃだめだったんだ きみのこと それでもいいやって思えなかったんだどうして つなぎとめる言葉を毎日少しずつ落っことしていく いま、両手でひらっても指の隙間すら零れていくねきみは笑っていた くだらない冗談を言った わたしも笑っていた いつか墓場…

思うこと

長い経過のうちの ある状況だけを抜き出して それはそれは立派なお伽話ですと鼻で笑ってみせる わたしだって ある一部分の思い出を美化して、 長い経過のように見せているんだろう ネットの海で言い逃れして手を伸ばせば伸ばすほど素直さは遠ざかる欲張って…

亡羊

"奇跡なんて、もう泣かないの、 泣かないの"童謡だったか あれは一昨日の夢のなかで流れていたのか昨日、無線から流れていたのか忘れてしまったな よく知っている声けれど母親よりも愛溢るる…壁に背を押し付けて俯いて土管とたたずむ夕暮れ誰を待ってた そう…

名ばかり

疑わない 夜きみの首の赤いみちすじ ここまで書いたのは覚えている言葉足らずの表現に酔っていることへの嫌悪感に襲われ続きを書けなくなった窓の向こうの誰か降り積もる雪に閉ざされた わたしとあなたが同じ絶望を感じている そんなイメージを描きながら わ…

ますます興味が なくなっていく自分で よくわかる最近は当たり障りのないことを言うのが得意になってきて高く伸びた鼻を ぺちゃんこにみせる方法も見つけてしまった うまくかわせ このみちは知っている腐るまえに飲み込めば きっと楽に振り返った あおくさい…