irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2017-04-23から1日間の記事一覧

医者の手が頭蓋骨にふれる。割れ物を扱うように、注意深くその骨弁を脳へあてがう。 鮮烈なイメージを遺すには、詩では足りない。 ―君だったのか。夢に鯨をしのび込ませたのは?

患者の標本をつくる部屋をさばき室をと呼ぶ。排水溝は数年分の血液が溜まっていて、きみは手が荒れるから掃除したくないと言う。

映画

医者が二人、ソファのある部屋に入ってくる。私が淹れたコーヒーを飲みながら、二人は映画の話などをしている。

沖縄みやげのビールを見つからないように隠した。冷凍庫で風がねむっている。

クルー

語るために辞書を破った。片手で指笛を吹きながら、片手ではデマを連ねるような辞書だ。 三頭船員室の薄暗がりで目が覚める。床にコーヒーの染み、乱視用の眼鏡。長い間ここへいるうち、ネズミとも口がきけるようになった。 船長の姿はない。今頃、フレック…