irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2009

逆光

かつて大嫌いだったものに今は一番すがりたい蔑み貶し続けたありのままの現実 窓は泥だらけで外を眺めるにもどうしたらいいいつか仲間とふざけあった小さな悪戯がこびりついて暖めても濡らしてもとれやしないの夜になると記憶たちが夢に毒を忍ばせて わたし…

グルー

きみの行く道を憎む我ながら卑怯だと思う辿り着く場所が同じでも星が瞬く道だった地平線が淡い虹色になる夜明けの美しさと きみの嘘が重なって わたしは静かに嗚咽を洩らす この殻のなか二人 抜け出せると信じていた きれいな嘘なんて なんの意味があるだろ…

壁を隔ててもう一度呼応する自分に問いかける夜道はあかるくて不安になりはしないかい照らされて浮かぶものだけが真実だなんてそんな 孤独の集まりはやっぱり孤独で世の中の異常を語らい冷笑を浴びせあっている 群衆はみなこうなのだろう社会とはそういうも…

今夜さようなら

小刻みな友情 微笑みはたやすい逃げるのにいちばん手早く確実な方法だ エメラルドの瞳も いまは邪魔だろう映る世界がすべて眩しいから高く売れるよ捧げてきたのは ことばだけ ことばだけで、 欺くという概念を あの子はまだ知らない

夜の高速 柔らかロード

バスがつれてく東のくにへ ぼくはこれでも人見知りのつもり浅瀬にかがんだ夜顔を束に集めて贈った日ぼくたちの青春は始まってもいなくて だから少し急ぎすぎたね もういいよと言うのに その先は唇を結んで弾けた実を恐れたりして いま通り過ぎた灯台が ぼく…

私たちは離れる

私たちは離れる放物線y=x2去年君に教えてもらった数学のノートはもうない怠惰なことを知らないで まじめな二人は すなわち生きにくい二人 重なったことも無意識のままに君はもちろん幸せになれよ そうでなけや舌を噛み切れ顔を見てなど言えないから昨日の電…

泣いたら泣いてなきかえす

たぶんまだおわらない ぼくの空想の闇は絵本のページをめくるみたいに すぎていってはくれない朝がくるのに雀は鳴くのに捨てきれないわけを思い出せないきみが奪ったんだ ナイフ刺したんだ何度だって依存したい つよい揺らぎだったんだ夜がくるのに ぼくは寝…

地中海

まくらな闇のなかで扉の閉まる音だけ聴こえる ここは冷夏の街であり ずるりと伝う背筋の凍えに思わず底を失くしてしまう昔誰かが教えてくれた「万事に耐えるときの姿勢」"目を瞑り息を止め水を抱く"何度 無意味を証明しても いまはただ祈るように時計の針と…

うらみの森

今夜はうぬぼれたいな満月のおかげで望みは叶いそうだな 追いかけっこはじまる! ( 鎮まりかえった森の奥 いけない子、 足を踏み入れてはいけないよと言ったのに。 ) どきどきしてそわそわするいけないことをするのは快感近づいては遠ざかるきみを追うのもま…

うそつきつね

聞こえるものかと思って吐くうそ、うそ、うそ鼠と銅の泥沼に沈むわたしの叫び声 やっぱりわたしうそつきだったなんにも守れないわたしがわたしとした約束も だけど大丈夫はじめから期待はしていない「できることとできないことは生まれたときから決められて…

未練はありません

糸を切る ぷつりと切れる折れた翼のように生まれたときからずっといっさいの可能性を失ってきた糸を自ら断ち切って前をむく この先には ひかりしかない そうでしょう両目がきらきらするし背中には陰ができてる五感をふりほどいて わたしは歩きだす めぐりめ…

なんだか獣

長風呂には崇高な意味があるそのいちにちに拾ってきたみにくい・けがれた・あやふやなこころをながすから お風呂あがりに牛乳を飲むとたまに牛のことおもう白いだけでもともとりっぱな血なのにわたしはぐいぐい飲めるからやなやつだろうたぶんでも明日の元気…

わたしたちがエデンに行けない理由

たとえるならきみは花、のかたちをしたとかげ灰白色の石のうえ、その瞳は黒い砂が舞う砂漠のようで そうだな、ひくく垂れ籠めた曇天が似合う だけど地上に墜ちた星が沈黙のなかで未だくすぶっていると知っているから卑怯だとおもう いまも、 陽光とたわむれ…