irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

地中海

まくらな闇のなかで
扉の閉まる音だけ聴こえる

ここは冷夏の街であり
ずるりと伝う背筋の凍えに
思わず底を失くしてしまう

昔誰かが教えてくれた
「万事に耐えるときの姿勢」

"目を瞑り
息を止め
水を抱く"

何度 無意味を証明しても
いまはただ
祈るように

時計の針と愛し合い
穏やかに宿った光
わたしから始まる
新たな星をどうか未来へ、と

いま深く突き刺した
首筋から溢るあたたかな海
この身はやがて岩漿の火を灯し
またわたしも先の人となって
遥か頭上にみえる
命の耀きを待っている