irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2015

昔話 (申年の先輩と)

「汗水垂らして働いて裏切られました 今日も信号が青だから渡れと言われました何故 夜明け前に眠って一時間したら起きます今日が夜勤なら電気を付けたまま寝ています休憩室の冷蔵庫にビールを入れた犯人は私じゃありません 誠実さを掲げては 互いに罵りあっ…

帰り道

京都から名古屋に帰る新幹線の中で母と隣どうし座った母はウールのコート私は革のジャケットを脱いで 一息つく私たちは少し 疲れていた―おじいちゃん死んでしもたなぁ―そうだね、母にはもう両親が居ない父は先月から血圧の薬を飲み始めた―次は誰になるんやろ…

コミュニケーション

私は犬 先生は羊 うまくやりましょう お互い うまくやれると 調子狂うなんて可笑しいわ先生 今日はえらく機嫌が良いのね

アップデート

話の途中でピクリとも動かなくなったからこの人は停滞を感じているのだろう 今目の前の四車線の道路とは違う 停まれ自動車 鍵を返せ 停まれ自動車 幸先を示せ 停まれ自動車 渋滞でイラつくのは 矛盾 生まれたばかりの子どもと 握手それはまだ 挨拶ではなく調…

風が吹くとゆれる

運河の境目の公園で蚊にくわれた川沿いを歩きながら強い風が吹きコンタクトがずれて 涙 えんこはしの西の家は土屋くん家に似ていたあすこにはたくさんのグッピーが居たがこの川には死んだ魚が浮いている 立入禁止だとか安全第一だとか立て札ばかりで 人はな…

天使

きかせてくれよ 声を誘い合わせて降りてきたんでしょう 天使呪文のような名前で呼びかけることも憚れるような美しい名前でまだ声が聞こえない きかせてくれよ 声を80dBの音階で唄うのでしょう生まれいづる悦びを 自己犠牲は自愛のうちに成り立つか自己欺瞞は…

ドラマティック飛行体

こんな具合で始まる イザナギとイザナミが引っ掻き回したスープはオガクズになって降り積もったはじめは鉱物のようだったのがニンゲンが生まれてはじめて星は土を得た そしてほんのわずかな時間立っている私燃えるマグマに色が無いように魂にも色は無い 神話…

一日は長いんだから

一日は 長いんだから使いきらないと損だろう今日が終わるまであと三時間チョット本屋へ行こうかな 一日は 長いんだから使いきらないと損だろう待ち合わせまであと三分鏡くらいは見ていいかな 一日は 長いんだけど一月は 早いなあ一年は 瞬く間に過ぎ一生は …

忘れないように

今日は良い天気なので覚え書きしても良いだろう - 悪名高い市民病院の日曜のエントランス- 政治的な側面の神社に咲いている彼岸花- 校則違反のブランドバッグを提げた高校生- 美人 わたしはそれらに心の何かを掬われる

近未来

笑ってはいけない新幹線の中で笑いを堪えている声が漏れてしまっている小学生サンマンションとは名ばかりのAからH棟まである団地で壁に書いた相合傘とゴジラ みどりちゃんはみどりちゃんという名前の予定だったけれど男の子だったからカズヘイくんになったと…

思い出

ねえ 授業中カンニングしてたでしょう 知ってた壊れて間もないメトロノームと壊れたままの古いチャイムとあの頃 君の描く無重力に私は酔いしれていた まだ君は かくれんぼしてるだろう気づいて上司も君に目つぶしをしたい悦ばしいのはリストラ晴ればれとした…

温室

そこにはゴロツキが一匹 流行はこの市松模様ですと壁に掛けられた椰子の木が微笑みかける芥子の実は毒ガスへ教室中に充満する多肉植物が孕んだのは ドラキュラの卵だしそう クール アンドロイドはヤマを張って転落する工作員は北口にこっそりテントを張って…

新生 / 口から

先日 交通事故を起こしたおじいさんは跳ね飛ばされてかと思ったら直立に起き上がって すたすたと歩き始めたゲームの中のように スターのマークを手に入れた訳でもないのに それからなんだか 調子が狂ってしまって毎日 考え事ばかりしていた右足と左足とが同…

図書館にて

良い午後だ紙の擦れる音とか中国人の親子のとぎれとぎれの会話小学生はソファで寝ているビジネスマンは4階、学生は3階の学習席で寝ている私は谷川俊太郎氏の詩集を読みながらにわかに詩の公式のようなものを見つけるだから詩集を閉じて科学史を読むことにし…

詩と宇宙

何かに熱中しているとき わたしの両手はつめたい思考は今 宇宙を旅していて心は絶えず わたしであろうとするみんなばらばらの動き 「君がボーとしているから追い越したよ」と時間わたしはハッとするそして何かをつくりだそうとする でも 両手は思考ほどの飛…

わたし統計ではタバコを吸う男性の8割がコーヒーが好きだ そのうち半分は無糖を好むが半分は砂糖を入れないとコーヒーが飲めない 砂糖を入れるほうの男性の9割が貧乏くさい着古したTシャツ可燃ごみに出そう時間を潰すためにパルコへ けれど何も買わなかっ…

X軸でもY軸でも、どっちでも良いから、どっち付かずはっきりものを言うふうの君は感動されたがりなだけで何も実がないオセロも、花札も、UNOも飽きたよ共産主義だからジェンガがしたいです教室の隅で、耳の辺りまでしか手を挙げられなかったあの日から主張を…

funny situation

医者の話を半分も聞いていない祖父だが降圧薬の飲み方は完璧だ医者はネットスラングの用法についてとても懐疑的で処方箋は意図的に暗号めいている国会ではコトバの転用について揉めているが ルールは実に流動的で歴史は常にねじ曲げることができるit is funn…

若いことが羨ましいのは、 うどんの店に就活スーツで入ったり 信号みたいな色のパーカーを着れること君の素敵な要素は、 足かけ6年の恋人がいることとか 大学を一度辞めたこと目の前に猫背のミッキーマウスのフィギュア かと思ったらペンケースだった 私は雨…

五月

足元もべたべたするし明日には霧が晴れるし まだ始まったばかりの言い訳 即物的にカロリー摂ってるから即物的に消費する すぐに怒り出すし わら人形よりたち悪い ひと息つこうって何ばい目かのカフェインで キリキリ舞いの夜姿 明日には霧が晴れるから もう…

スモーカー

喫煙所には三人の男が立っていたそのうち一人は肺気腫の患者だがあまりお互いに関心はないらしい ひそひそと話をしているがここではよく聞こえない恋人が何か囁く ずっと聞こえているのにすぐに忘れてしまう忘れるために聞いている一本のシガレットで肺を潰…

わや

電話はあと回しになる繋ぎ止めておくためのマスキングテープで黄色黄色になった表紙で読めない元の文字 生来のあり方を忘れて電話はわずらわしいタスク通帳をマックに置いてきてしまった50の母と同じミスをする まるで黄色い包囲網 取りこぼしたものが光るか…

スーパー個体主義

何故別れ際に羊羹を選んだかというと もう二度と君に会うことのないように何故嫌味のひとつも言わなかったかというと特にかけたい言葉もなかった ひとに迷惑をかけない ひとの気持ちを考える君の言う「ひと」って全部、「自分」の事だろう?そういうのをDNA…

憂鬱

喫煙席は奥だと言っていたがあまり守っている人はいない この土地柄は流石だ彼女らはあの席に座りたがる通りを歩く人々がよく見えるから スマートフォンは鏡として使うものだっけか?などと思いつつ うたた寝していたらもう彼女らの姿はなかった ああいつだ…

すべての現象が意味を持ち始めた あらゆる戸棚を閉めただろうか整理整頓をして これを書き留めておかねば考えることをやめたら夜は明けていく あっという間に年をとり私はすきな誰かと結婚しているかもしれない矛盾を無視して生きていたら気が付かなかったこ…

君は一生成長しない

君は一生成長しない ということを おまえが言うな というような人が言う。 君は一生成長しない ということは一生 中学生のまま。セイラー服の、ミニスカートの。 君は一生成長しない とは言っても昨日の食事が骨になり明日のために勉強し今の怒りはつづかな…

強欲なおんな

だいたいこのちゃんぽんは 想像どおりの味がする だけどそれでいい今は想像どおりのものを食べたい食欲はとめどないが 強欲にはかなわない「あ」という文字を縦の棒から書き始めても結果があればそれでいい よだれを垂らして昨日 目を覚ました もう夢の中か…

そのあとに ひと編みの緊張がほどける じゃまをしないことを はじめに教えられた どこに転がっても おんなじの手紙で はじめから決まっている筆跡を なぞるような人だった多分まだ空想の未来で彼女は息をしている私にはさわれない世界の話だけれど文脈の一直…

黒いひとつぶざわめきの中に形を無くすファッションこそ没個性蝙蝠たちの夜に埋もれる数学の文章題のA吉野弘の詩とともにわたしは追跡体験する「I was born」…。「――ほっそりした母の 胸の方まで 息苦しくふさいでいた白い僕の肉体――。」そうして生まれて時…