irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

聖夜

肩の革張りの重みをまもろうとするごとくかたくなに腕をこばんだ口下手を夜ごとに恥じて鼻へ抜けていくアルコールの香り誤魔化しがきかないんだろう底から噴き出してくる欲望を運動機能が落ちたふるえる右手の先でする する する とペンのうねり一秒ごとに展…

戦後

新世界に神は必要ない神は簿記を始めたことし人魚から初めての政治家が誕生したがメディアに煽られ自らヒレを切り落とした私たちが東京に旅行したのはその頃で姉は動物園で熊を嫌がって虎を見たその夜薬膳鍋を食し私たちは浄化の術を学んだが「どうせすぐ月…

世界とわたし

まぶたに手を置いてじんわりとその筋肉がほぐれる後頭葉ではまだ花見をしているような騒ぎが続いているが黒いお面の小人が一人ずつカーテンをひく係で 左右からわたしの脳内を走って前頭葉まで暗幕をかけ始める 現実ことばによってわたしは世界と微妙な距離…

風邪

カゼ菌が喉頭蓋の上をさわさわうごく息をするたび 声門が開くたび気道に滑り込み私は驚く顔を真っ赤にして 目を見開いて咳き込む しんでしまう と思うこのまま咳が続いたら 息も出来ない身もだえしながら 弱い自分をのろうこんな思いをしているはずではなか…

矛盾

救急外来に運ばれた急性アルコール中毒の患者はカーテンに向かって唾を吐きちらす患者の飲酒量はビール中ジョッキ十杯で致死量の半分にも満たない足りなかったねと師長が毒を吐く私は師長が好きだった 年を言うといつも若いねと言われた二十歳から働いていれ…