irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

戦後

新世界に神は必要ない
神は簿記を始めた
ことし人魚から初めての政治家が誕生したが
メディアに煽られ自らヒレを切り落とした
私たちが東京に旅行したのはその頃で
姉は動物園で熊を嫌がって虎を見た
その夜薬膳鍋を食し私たちは浄化の術を学んだが
「どうせすぐ月曜にチャージだわ」と姉が言った
私は姉が好きだった

日曜の駅前で軍隊のすばらしさをとうとうと語る人が居た
誰も耳を貸さないで通り過ぎていく
私はどう接して良いか分からず
声をかけてきたフィリピン人女性に20円の寄付をした

連携をうたう人
孤立をふかめる人
どちらでもない顔の利己的な人
少数派を非難する多数派
扇動者
物語なかばに夜が閉じる

姉の希望で寄った神社で
私は神性にふるえて手を合わせていたのだが
ご利益は起こりようもなかった
なにせ神はすでに簿記で食べていたのだから
世界は多様性などという論点を
持ち合わせてもいなかったのだから