irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

2019-01-01から1年間の記事一覧

詩になる身体

どっちつかずの言葉が詩になるならいっそ何も知らないままで良い無知の断罪を晒して生きた証にしてみたり 主義主張のない両親の庇護の下で暮らしたいいつからかまぶたにできたシミをなぞって時間の逆流を思っている 両手の指より意識が多い三次元で生きてい…

劇場

舞台袖に催涙弾を投げ壁の穴に耳打ちをし笑い声が音響になる高架下からヒキガエルが飛び出しみんなが引いている どちら側からでも迫れる強力な観念持ち合わせた おどろおどろしい漬物を箱ごと炒めてすべて使ってしまった土曜日の郷土料理の鍋敷きになる踏み…

スポッティング

喜びは補正しなくちゃ色を塗って汚れたら水で浮かせてうまくやれたら立体になる 思い出づくりが得意だ趣味が合わないのはそのせいだ歌を歌えばどの音も半音上げるから愛されない音痴だ 日めくりカレンダーめくるのが勿体ない五百回くらい同じところを回って…

劇場2

横取りはしない主義でも横入りは無意識のうちによくしてる踊らないとおとぎ話にも出してもらえないから苦し紛れにやっている選んでいるから選ばれる一途な心は浮遊する仕事着は血で汚れているからカモフラージュの衣装と同じロッカーに入れられないのです

表現の不自由

夜になるほど、唇は左を向くから愛国心に背を向けたわたしの指先など、きみは忘れてしまうだろうどっちらけの仲でも両端に光の灯った国会議事堂で新しい言語が、習慣になるまで もちろんそんなことで美人は夜逃げしない落としたまぶたと、まつげの先まで整っ…

生活の線引き

共通認識としてあの地震の時何してたって言葉は他人事の言語わたしを差し置いて世間知らずになるのやめてよなどと憤りを覚えて気が付くとデリカシーの無さと性欲は比例するって持論テーブル越しに沸いている いつまでも子どもでおられないおとこ言葉が君のア…

実家の詩

置いてきた漫画を読みたくならない、二十年の蓄積は、幸福だったと思わなくては、やるせないのにいつでも孤独なふりで帰れないと呟いた母も寝床で、スマートフォンを触っているの?誰を呼び戻したくても、今起こった小さな揺れを怖かったねって言い合いたい…

職安の詩

こなれたワード並べて知的なふりをしてみたり大衆に媚びたロック・ミュージシャンも少しは好きになってなんでも有りの判断軸はなんにもないのと一緒無職でいるうちにパワースポットにでも行こう なんて馬鹿げてる今が一番人間らしいって 夕暮れの職業安定所…

乾杯の詩

チャンネル合わせられない悔しさがそんな炭酸で埋まるものかよ喉を過ぎて熱を帯びているのが毒で、歌が唄えなくなる義務感とは別に思考を越えた心情がするする語り出す集中がとみに築かれたら、徳も積めるかな制限時間の中で生きているから、話したいことは…

蛍光灯

蛍光灯を新しくしただけで照らされた四隅に見つめられている白々しい嘘ついてるみたいなあるいは疑う心で塗られたみたいな 海に出ても船はもう出ていない女神の声に追い立てられているお風呂にしますか?ごはんにしますか?怖い怖い幻聴 先の予定で首を絞め…

みえない誰か

けさ、明け方、ベッドに火薬を仕掛けたね?爆発音の中を激しい雨を走っていく肩で息をする夢はそのせいね けさ、明け方、ベッドの中で笑っていたね?暖かな浮遊で世にも穏やかな心地で目が醒めたのはそのせいねもちろん浮遊の間左手はベッドに置いて、そこか…

キッチン

ご飯を作るためのキッチンで不良むすめ猫と煙草を吸っている食べてもらうはずだった食事を今しがた捨ててしまったところ 自分の分は忘れて作ったはしから人にあげてしまうのそういう母親を見てきたから少女もそうやってきたスポンジみたいに絞られるまで や…

明け方の夢

私たちは抱かれるときいつも体温があるという前提に立っているたゆたう木の枝を幽霊と思って明け方の夢の中でまどろむ 疑えないまま口先だけで語っても宙に浮いた自分を見つけるだけだ冷えた空気でも目が醒めないで肺の中は生ぬるくて夢だとわかる 過ぎ去っ…

祈る

一月の早朝のほの暗い空から溜りかねた一滴がつむじの上に落ちて冷たい地下鉄へ続く階段にはコーヒーとアルコール代謝ドリンクの空き缶ラブホテルのエントランスの薄汚れた明かりがそれらを照らして浮かべている わたしは階段を下りていく どこへ行くのだろ…

予感

頭の回転はねずみ色でも迎えるままじゃ困るって腹の中は交感神経優位に緊張してはいるが不思議と耳は聞こえるもので流れてくる何千の情報は捌いていた 紅白色に爪を塗り立てて 祝う心は十分ある年を越すってそれだけが奇跡のように嬉しくて喉に詰まらすなよ…