irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

キッチン

ご飯を作るためのキッチンで
不良むすめ
猫と煙草を吸っている
食べてもらうはずだった食事を
今しがた捨ててしまったところ

自分の分は忘れて
作ったはしから人にあげてしまうの
そういう母親を見てきたから
少女もそうやってきた
スポンジみたいに絞られるまで

やわらかな光のような
愛情の手ほどきを
まだ教えてもらえるかな
換気扇の下の小さな廃工場でも

猫の細い舌で湿った指先
感じているぬくもりが
誓わなくてもきっとまた誰かに向かっていく