irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

明け方の夢

私たちは抱かれるときいつも
体温があるという前提に立っている
たゆたう木の枝を幽霊と思って
明け方の夢の中でまどろむ

疑えないまま口先だけで語っても
宙に浮いた自分を見つけるだけだ
冷えた空気でも目が醒めないで
肺の中は生ぬるくて夢だとわかる

過ぎ去っていく誰かの影
わずかだけ交差していた誰かの影
煮凝りのような愛情の海
子どもが母の背中を掴んで震えている

朝になるまでの幻想のなかで
もうここにないものを追いかけないと誓う
詩になるための言葉だけ
胸の隅にひたひたと満ちていく