irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

無口な貝柱

目の前のひとが
できるだけひどいめに
あえばいいのに

とおもうとき
こころがすみやかに暗幕をひいて
深海の闇が広がっていくのをかんじる

無明無音の舞台
外側から聞こえる
嘲笑や罵倒が
感情の暴発をくすぐっている
それら感情の首ねっこを押さえ
呑みこみ堪える作業によって
わたしはわたしのかたちをたもつ

まるで聞く耳のない耳
しゃんと伸びた背
前だけみつめられる瞳

りっぱなにんげんさま

だし汁になるまでに
できるだけひどいめに
あってしまえばいい