irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

理性的な幻

この病院には看護婦が一人もいないと彼女は言った
愉快な発想で掲げられた 有名な芸術家のポスターを見ながら
病院のロビーできみは言った
代わりというわけではないけれど いない君の妹がみえる と

小泥棒の歩幅で縫い合わせた夜は
精神世界を理想郷に変える
きみは継ぎ接ぎのことばで 二人を取り繕う

誇りを置き忘れて
まどろんだ瞳は人見知り
期待に応えられなかった真っ赤な手の平
夢みがち 睡眠不足の彼女は
笑ってみせる力もない

桟橋を渡りきったら
振り返ってはいけない
きみの理性を隠しておくから
はやくこちらへ戻っておいで