irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

手術室_02

標本みたいだな
私たちの手のなかで
好き放題の躰
ポピドンヨードで染まった
黄褐色の皮膚
メスが入って
開創鈎で拡がる
人間の中身は
なんだか人間じゃない
悪いけど人間には見えない

ろっ骨を取るよ
はい取れました
削っておいてね
あとで使います

先刻まで肉体の一部だった臓器は
既にこの人のものではなく
先刻まで強張っていた顔は
薬で穏やかに眠っている

このまま無事に終われば
やがて目は覚めるけど
今ならすぐにでも標本になれる
なれるよって囁こうか
ひょっとしてひょっとしたら
賛成されてしまうかもな