irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

孤独

誇り高い患者は
だから足を切り落とすことを選んだ
家に火を点けて楽しんでいる
気の狂った医者は
明滅する炎の中に
自己のアイデンティティを性欲へ置き換えた
そしてようようと軍歌を歌い
チェーンソウを握り足を切り落とす
そうして その日一日は上機嫌なのだが
ふたたび日が昇れば また
押し潰される自我に耐えられず
放火の欲求に駆られる
片足は炎へ投げ込まれても
そのままのかたちでのこっている
医者は浮かれている
放火には手慣れているが
仇討ちは想像もしていない
ずいぶん滑稽だと
彼に耳打ちして教えてくれる人もいないのだ