irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

つよい心

耳鳴りがするのは
誰の鼓動。
私の情動。

夜の帰り道
きみはスクランブル交差点の真ん中で
ポケモンハントに夢中になっている
軽自動車の内側で
ふと目が合えば、恋
車ごしに恋に落ちる。

電信柱に立てかけられたゴミ袋が
路上の誰かに手向けられた花束に見えてさ
顔も知らぬどころか存在しない誰かのために
起こってもいない事故のために
何度も祈りを捧げた。

躓きながら歩くことが虚しいのは、
それでも決してゼロではなかった、と
なぐさめの言葉が欲しいからではなくて
仕事なのだから
100じゃなきゃ
120じゃなきゃ意味がない、と思うから。

ほっと、もっと、いいでしょ
酔った会社員が女将さんの肩を寄せて囁く
げすな台詞は
すべて私のあたまの中で構成されたのだ。

ああ、耳鳴りがする、
頭が重い。
つよい心は
祈りでも恋でもなくて
つよい使命感
それだけなのだ。