耳鳴りがするのは
誰の鼓動。
私の情動。
夜の帰り道
きみはスクランブル交差点の真ん中で
ポケモンハントに夢中になっている
軽自動車の内側で
ふと目が合えば、恋
車ごしに恋に落ちる。
電信柱に立てかけられたゴミ袋が
路上の誰かに手向けられた花束に見えてさ
顔も知らぬどころか存在しない誰かのために
起こってもいない事故のために
何度も祈りを捧げた。
躓きながら歩くことが虚しいのは、
それでも決してゼロではなかった、と
なぐさめの言葉が欲しいからではなくて
仕事なのだから
100じゃなきゃ
120じゃなきゃ意味がない、と思うから。
ほっと、もっと、いいでしょ
酔った会社員が女将さんの肩を寄せて囁く
げすな台詞は
すべて私のあたまの中で構成されたのだ。
ああ、耳鳴りがする、
頭が重い。
つよい心は
祈りでも恋でもなくて
つよい使命感
それだけなのだ。