irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

風の強い夜に考えていたこと

思えば、あらゆる柵の前
動くものを捉える
流線型のひとみ
視線のさきで、ほしいものなど 無かった

苦しみは果てなく
灰色の海に沈んでゆくように思う
そのふかい闇で
卵に還る自分を描く

夕暮れの溜まり日は
一人きりの足元をすくう
コンクリートの庭で
いつか空き地に消えた子供を探した
行方はわからない

目が醒めていつも
まどろみのなか
先ほどの悪夢を引きずって 肩が重い

まっ白いシャツ
アイロンはかけてある
袖を通すだけの日々に
なんの満足感を得よう

一日の終わりと始まりが
区切りなく、
いち日も いち年も、
同じのようだ

白いシャツに
アイロンをかける夜
風がびゆうびゆう吹いている
コンクリートの狭間で
取り残された子供が泣いているけれど
風にさらわれ聴こえない
アイロンをかけ終わったわたしは
石の寝床でかたく目を閉じ
ただ次の朝がくるまでを待っている