irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

1.
奇怪な島に辿り着いて
もう三日三晩眠りの中にいた
黒い果実と死んだ魚
暗雲からたちこめる
硫黄の匂いに噎せた

起きて何も特別なことなどなかった
いつも通りに回転していると思ったし
みんなそれぞれに回転していたから
あたかも止まっているように見えた

2.

くしゃみと同時に揺らぎ始めて
動物たちは苦しげに餌をもどして高波が来た
失ったものの途方もない数を
口を開けて飲み込むしかなかった
フラットだと感じていた私たちの関係性は
実はでこぼこで
東北訛りでいじめを受けて
社会問題を教室で語った

3月11日の14時46分から
平らになった地面から
不均衡が現れた


3.
夏も冬もあまり気候が変わらなかったと
こんな年は初めてだったと
ビームを浴びた魚が死んで
それを食べた鳥も死んだと

重要なのは匿名性じゃなくて
当事者性
かつ非特異性と非個人性
風土と家庭
そこに生きている語りは考古学のように
痕跡を残そうとするもの