irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

帰る場所

聞こえていたのに返事をしなかった
とおい海の底から、
頑張ろうは今こそだのに
痛々しいから、始めから頑張ろうなどと
叫ばなくても良かったのに
だから返事をしなかった

飛行機の切り取られた両翼を想像した
絶望のすぐそばに希望が住んでいる
穏やかな水などはなく
わたしもその水の一つになる

入り組んだ山の道を越えて
昔話のようだと比喩をして
そこに住む人は使えるものにしか意味を感じない
それならばぼーっとするのは私のほうが得意かもしれない
一人で旅をするのは
友だちをどんどん捨ててきたからで
多くは何にも言わないで別れた
正解も不正解もない

それでも誰か、私を呼ぶ声が聞こえる
土地に声がある
帰るべき場所が私にはあるのだ
地響きのように鳴る
そこで低く声をあげているもの