乾杯の詩
チャンネル合わせられない悔しさがそんな炭酸で埋まるものかよ
喉を過ぎて熱を帯びているのが毒で、歌が唄えなくなる
義務感とは別に思考を越えた心情がするする語り出す
集中がとみに築かれたら、徳も積めるかな
制限時間の中で生きているから、話したいことははじめから決まっていたの
次は君の話を聞くからね、必ずね
蛍光灯
蛍光灯を新しくしただけで
照らされた四隅に見つめられている
白々しい嘘ついてるみたいな
あるいは疑う心で塗られたみたいな
海に出ても船はもう出ていない
女神の声に追い立てられている
お風呂にしますか?
ごはんにしますか?
怖い怖い幻聴
先の予定で首を絞めて
早合点で絶望しがちで幸福だ
照らされた四隅で犬が吠えている
狭い部屋で立ちんぼでも
上へのぼって息をしなくては
みえない誰か
けさ、明け方、
ベッドに火薬を仕掛けたね?
爆発音の中を
激しい雨を走っていく
肩で息をする夢はそのせいね
けさ、明け方、
ベッドの中で笑っていたね?
暖かな浮遊で
世にも穏やかな心地で目が醒めたのはそのせいね
もちろん浮遊の間
左手はベッドに置いて、そこから徐々に
身体に血液が戻っていくのを感じてた
けさ、明け方、
ひどく冷えたね?
教会の鐘鳴らなかった
代わりに、誰かが、
わたしを強く抱き寄せたのを感じた
キッチン
ご飯を作るためのキッチンで
不良むすめ
猫と煙草を吸っている
食べてもらうはずだった食事を
今しがた捨ててしまったところ
自分の分は忘れて
作ったはしから人にあげてしまうの
そういう母親を見てきたから
少女もそうやってきた
スポンジみたいに絞られるまで
やわらかな光のような
愛情の手ほどきを
まだ教えてもらえるかな
換気扇の下の小さな廃工場でも
猫の細い舌で湿った指先
感じているぬくもりが
誓わなくてもきっとまた誰かに向かっていく