橙の花
まっすぐに伸びた背
きみの呼び鈴
小猫のように野原を駆けていく
芳しく鼻をつくかおりと
そのしゅんかん 千々に乱れる
このあつい恋情の一幕も
わたしだけに与えられたものではない
彼らに背を向けて
ふたりひそめきあった 草の根の いろはも
きみが放った言葉が
わたしのかんざしを花に変え
わたしを少しずつ 彩ったことも
もうすぐ一人きりの思い出になって
とまれない船に乗る
ずっと きみの後ろで歩きながら
このまま はなればなれになるときまで
みずから理性をえらんで
けっして溶けあわない不完全な温度で
きみに微笑みかけていよう