irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

創造的な人々に

彼らは絵本の中の子ども
教室から息切らして逃げてきた
シェパードの取り逃がしの二人

彼らは宇宙テキ時間感覚で
何百のイメージをていねいに摘みとる
花の影、目の横の皺、草の海
お日様を作るのさ、と笑った
化学実験は終わらない

彼らの料理は最高だ
けれど同じものは二度と頂けない
際どさが一層の調味料になる
一言持ち上げると二人のコックは上機嫌
「月のソテーが一番うまいさ」
月の兎も初耳だろうて

ときは四千X年から来た魂が
彼らにすっぽりはまっているから
わたしも魂の有るままに
自由に行けるような気がする

お日様が照らすのは
この星ばかりでない
届かないところに居ても
確かに見える子どもたち

 

初稿 2010年頃

heureux

人差し指が入っていきそう
と思う
臍の暗がりに
第一関節までも入らないのを確認して
頬を寄せる

生暖かい海が
この中にあるんだと思う
多分 わたしにも

震える膝に
ボールペンを突き立てて
飛び上がる前に君が
鉛筆の跡はぼかせる と わたしの膝をこする

だから
融け合わないことを知っていて
契りは自分に科すもの
私たちはheureux
はちみつのよだれ
驚いたら 左側で
聞きなれない息の音に
わたしの海のさざなみを聴く

詩になる身体

どっちつかずの言葉が
詩になるならいっそ何も知らないままで良い
無知の断罪を晒して
生きた証にしてみたり

主義主張のない両親の
庇護の下で暮らしたい
いつからか
まぶたにできたシミをなぞって
時間の逆流を思っている

両手の指より意識が多い
三次元で生きていくには
どうやら身体を持て余す

鏡の中に母親の顔は写らない
遊びじゃないのに
テーブルに展開した積み木の結論
何度もばらして
ばらしたままのほうが良い

劇場

舞台袖に催涙弾を投げ
壁の穴に耳打ちをし
笑い声が音響になる
高架下からヒキガエルが飛び出し
みんなが引いている

どちら側からでも迫れる
強力な観念持ち合わせた

おどろおどろしい漬物を箱ごと
炒めてすべて使ってしまった
土曜日の郷土料理の鍋敷きになる
踏み固められた劇場

スポッティング

喜びは補正しなくちゃ
色を塗って
汚れたら水で浮かせて
うまくやれたら立体になる

思い出づくりが得意だ
趣味が合わないのはそのせいだ
歌を歌えばどの音も半音上げるから
愛されない音痴だ

日めくりカレンダーめくるのが勿体ない
五百回くらい同じところを回っては
バターになる前に気がつくような調子

合理的なことに正義を見出して
言いたいことを言おう
ハイトーンの思い出くそくらえ

コミカルな発言に象られる
空想とのギャップがリアルに引き伸ばされる
補正のあとに生まれている
非現実のくそくらえ

劇場2

横取りはしない主義でも横入りは無意識のうちによくしてる
踊らないとおとぎ話にも出してもらえないから
苦し紛れにやっている
選んでいるから選ばれる
一途な心は浮遊する
仕事着は血で汚れているから
カモフラージュの衣装と同じロッカーに入れられないのです

表現の不自由

夜になるほど、唇は左を向くから
愛国心に背を向けたわたしの
指先など、きみは忘れてしまうだろう
どっちらけの仲でも
両端に光の灯った国会議事堂で
新しい言語が、習慣になるまで

もちろんそんなことで
美人は夜逃げしない
落としたまぶたと、まつげの先まで整って
だから信じた

車椅子で盲導犬と、官能的な絵の展覧会を
楽しんでは、だめ?
友達にはそこまでだって嘘をついた
激高していたのもフェイク
だって
フェミニストと処女、
だったから