irohato

a_yによる詩や短歌 https://utubuse.wixsite.com/ayweb

悪魔の仕事

しとしと雨の夜の中で
顔を上げて雨粒の落ちてくるのを見ていた
降るごとに冷えていくような風の無いしんとした空気の中
イルミネーションに照らされて
顔に届く前に細い粒が見える
小さな
小さな雨粒は皮膚を伝わずに
頬に留まっている

握り締めたPHSが鳴るのを待っている
鳴るのを待つのが仕事だから
誰かの誕生日にも
誰かの不幸の上に成り立つ
まるで悪魔の仕事じゃないか
そんな皮肉は笑われもしないだろうけど
きっと悪魔は少女の顔をして
自分の姿に気付かないまま

鳴る前に光るから
雷と一緒で日常を裂く一撃に
私は打たれてはならないので
かのこんな誕生日に
祝いのような恵みの雨に
誰かの不幸はあってはならぬ
ならぬと願う
それも仕事と