詩
空に月はメダルのように街角に建物はオルガンのようにそんなふうに見えたことはなかったメダルは水族館で買ってもらった日付入りの記念メダル建物は一群で浮かびあがるんじゃなくいつものそのただ中から見上げてきた 空に月は湿った弾丸ラアラア唄いゆく土埃…
炭酸が微炭酸になる頃には夏は終わってしまうんだろうか昔よりもこの季節を愛せるようになったのに 一度に二つ以上の荷物をもたないこと沈黙もときにはじゅうぶんな言葉になること自分を慕ってくれる人を人は憎まないということ自分とほんのわずかの身内が幸…
地下二階のMRI室へ続く薄暗い廊下の先に 病院の売店がある店員はユキコとサチコの二人だけユキコは必要以上にせっかちな小太りのおばさんでサチコは必要以上に丁寧ながりがりの骨ばったおばさんだ入院患者の楽しみといえば外とつながることができる売店の存…
「看護師さんになりたかったわけじゃなかった。あたし自分が無いからね。自分に甘いのはわかってるの。きみがお尻叩いてくれるから頑張れるんだけど。だからこれからも仲良くしてね。」 病院のPHSが鳴ったら君は飛び出していくんだから、もうそれが答えでい…
涙のほとんどは血とおなじで母から免疫成分の含まれた血をもらって私は泣きながら生まれてきたそして今も泣いている徒然草がそらで読み上げられなくて忘年会の幹事でみんなをしらけさせて耳元で囁かれた「やるならしっかりやってよ」母が夏休みにわたしに言…
タイマーを気にしている 10分51秒 いま、患者の体の中に 血液をさらさらにするクスリが入っている タイマーが鳴ったら そのクスリを追加投与するかを医師にきく モニターを気にしている今のところ心電図に大きな変化はみられない患者は唇を結んで天井を見て…
キュビズムも良いけど青の時代が観れてよかったピカソ展の帰り折角だからコレクション展で 黄金の騎士が見たかったけれど旅に出ているそうで 今日は見れず4月まで我慢できなくて ポストカードを買ったカワイイ友だちが描いてくれた 私の似顔絵と併せて100均…
サボっていたから 宿題をやってこなかったけど 遅番の日に国会答弁をみていた まじめな顔をして ときどき感想を口にして 生まれてから二度目の震災から五年経ち テレビからロックスターが消える エナジードリンクで人が死に 先生は釈放されクビになる そして…
目を瞑るとまぶたの少し上頭のひふの裏がわ 前頭葉の辺り小人のペンキ塗りが現れて黒色を塗って 暗幕を引く 必要以上に欲しがるのがかっこ悪くって大食い選手権が嫌いテレビではあんなに毎日うるさいのによその国の天気さえ 知ることができないフェイスブッ…
家に帰る私を想像してみるしずかで寒い一人の家腸のあたりが持っていかれるようなさみしさ 明日はパンの焼ける匂いで起きることはないし新聞をめくる音もしない猫が私の頭の匂いを嗅ぎにくることもない それでもそろそろ行かなくてはならないだから正月の群…
コートと柊、地下鉄から地上への階段こんなに寒いのにあの子は裸足 毛嫌いされるような若さが 雪の結晶のように輝いている
「汗水垂らして働いて裏切られました 今日も信号が青だから渡れと言われました何故 夜明け前に眠って一時間したら起きます今日が夜勤なら電気を付けたまま寝ています休憩室の冷蔵庫にビールを入れた犯人は私じゃありません 誠実さを掲げては 互いに罵りあっ…
京都から名古屋に帰る新幹線の中で母と隣どうし座った母はウールのコート私は革のジャケットを脱いで 一息つく私たちは少し 疲れていた―おじいちゃん死んでしもたなぁ―そうだね、母にはもう両親が居ない父は先月から血圧の薬を飲み始めた―次は誰になるんやろ…
私は犬 先生は羊 うまくやりましょう お互い うまくやれると 調子狂うなんて可笑しいわ先生 今日はえらく機嫌が良いのね
話の途中でピクリとも動かなくなったからこの人は停滞を感じているのだろう 今目の前の四車線の道路とは違う 停まれ自動車 鍵を返せ 停まれ自動車 幸先を示せ 停まれ自動車 渋滞でイラつくのは 矛盾 生まれたばかりの子どもと 握手それはまだ 挨拶ではなく調…
運河の境目の公園で蚊にくわれた川沿いを歩きながら強い風が吹きコンタクトがずれて 涙 えんこはしの西の家は土屋くん家に似ていたあすこにはたくさんのグッピーが居たがこの川には死んだ魚が浮いている 立入禁止だとか安全第一だとか立て札ばかりで 人はな…
きかせてくれよ 声を誘い合わせて降りてきたんでしょう 天使呪文のような名前で呼びかけることも憚れるような美しい名前でまだ声が聞こえない きかせてくれよ 声を80dBの音階で唄うのでしょう生まれいづる悦びを 自己犠牲は自愛のうちに成り立つか自己欺瞞は…
こんな具合で始まる イザナギとイザナミが引っ掻き回したスープはオガクズになって降り積もったはじめは鉱物のようだったのがニンゲンが生まれてはじめて星は土を得た そしてほんのわずかな時間立っている私燃えるマグマに色が無いように魂にも色は無い 神話…
一日は 長いんだから使いきらないと損だろう今日が終わるまであと三時間チョット本屋へ行こうかな 一日は 長いんだから使いきらないと損だろう待ち合わせまであと三分鏡くらいは見ていいかな 一日は 長いんだけど一月は 早いなあ一年は 瞬く間に過ぎ一生は …
今日は良い天気なので覚え書きしても良いだろう - 悪名高い市民病院の日曜のエントランス- 政治的な側面の神社に咲いている彼岸花- 校則違反のブランドバッグを提げた高校生- 美人 わたしはそれらに心の何かを掬われる
笑ってはいけない新幹線の中で笑いを堪えている声が漏れてしまっている小学生サンマンションとは名ばかりのAからH棟まである団地で壁に書いた相合傘とゴジラ みどりちゃんはみどりちゃんという名前の予定だったけれど男の子だったからカズヘイくんになったと…
ねえ 授業中カンニングしてたでしょう 知ってた壊れて間もないメトロノームと壊れたままの古いチャイムとあの頃 君の描く無重力に私は酔いしれていた まだ君は かくれんぼしてるだろう気づいて上司も君に目つぶしをしたい悦ばしいのはリストラ晴ればれとした…
そこにはゴロツキが一匹 流行はこの市松模様ですと壁に掛けられた椰子の木が微笑みかける芥子の実は毒ガスへ教室中に充満する多肉植物が孕んだのは ドラキュラの卵だしそう クール アンドロイドはヤマを張って転落する工作員は北口にこっそりテントを張って…
先日 交通事故を起こしたおじいさんは跳ね飛ばされてかと思ったら直立に起き上がって すたすたと歩き始めたゲームの中のように スターのマークを手に入れた訳でもないのに それからなんだか 調子が狂ってしまって毎日 考え事ばかりしていた右足と左足とが同…
良い午後だ紙の擦れる音とか中国人の親子のとぎれとぎれの会話小学生はソファで寝ているビジネスマンは4階、学生は3階の学習席で寝ている私は谷川俊太郎氏の詩集を読みながらにわかに詩の公式のようなものを見つけるだから詩集を閉じて科学史を読むことにし…
何かに熱中しているとき わたしの両手はつめたい思考は今 宇宙を旅していて心は絶えず わたしであろうとするみんなばらばらの動き 「君がボーとしているから追い越したよ」と時間わたしはハッとするそして何かをつくりだそうとする でも 両手は思考ほどの飛…
わたし統計ではタバコを吸う男性の8割がコーヒーが好きだ そのうち半分は無糖を好むが半分は砂糖を入れないとコーヒーが飲めない 砂糖を入れるほうの男性の9割が貧乏くさい着古したTシャツ可燃ごみに出そう時間を潰すためにパルコへ けれど何も買わなかっ…
X軸でもY軸でも、どっちでも良いから、どっち付かずはっきりものを言うふうの君は感動されたがりなだけで何も実がないオセロも、花札も、UNOも飽きたよ共産主義だからジェンガがしたいです教室の隅で、耳の辺りまでしか手を挙げられなかったあの日から主張を…
医者の話を半分も聞いていない祖父だが降圧薬の飲み方は完璧だ医者はネットスラングの用法についてとても懐疑的で処方箋は意図的に暗号めいている国会ではコトバの転用について揉めているが ルールは実に流動的で歴史は常にねじ曲げることができるit is funn…
若いことが羨ましいのは、 うどんの店に就活スーツで入ったり 信号みたいな色のパーカーを着れること君の素敵な要素は、 足かけ6年の恋人がいることとか 大学を一度辞めたこと目の前に猫背のミッキーマウスのフィギュア かと思ったらペンケースだった 私は雨…