昨日の日付でまだ歌っている昨日の歌声でまだ轟いている雀が鳴くような鈴が鳴るような高い音の果てに舵を切るだろう 待たずにいると 長い昨日の日付のノートは捨ててしまった突発的に寄せ上がる高波の不安も砕かれる防波堤で一日を過ごしていく努力で ふくら…
本屋に行っても心は晴れぬ文字は絵としても機能しているので情報が多過ぎる 何が私を癒すろうか明かり灯すように種々の音楽をわたしが電波に合わせれば流れ込んで 意識高い系の意識を ゆるめて皇室もイスラム諸国も政治スキャンダルもHonestyを聴きながらと…
間違いなく世界史的な標榜でもだまされたから また 欺瞞に思えるにぎやかなメディアはさまざまの問題を提示してコマーシャルはどれも 脅し 欲のない日々に少しずつ殺されるテレビをつまみに少し酔ってバーチャルな顔立ちの女優にため息をついて何度もだまさ…
歌っている一匹のムカデ一日のスピードに心は追いつかず意味を求めない空白を求めたい 頭の中這っていく一匹のムカデ酔って 音楽のその向こう語彙が広がるための語彙で感傷が海のように満ちるのを取り返せない流れの中で漂うことだれかと手を取り合うための…
平板に白黒のプリントとても重くて動かすことは出来ない間違ってることなどないと堂々たる押出しでいつからそこにあったんだろう 回転する時間小部屋の中で 平板が回る時間を遡る触れていく方向は一つであっという間に腕が閉じた めまいがするような逆さの感…
よく研いで人を斬った後は自分も胸に深く突き立てるんだよ そうして 罪を償うこと誓いを立てること突き立てた包丁を静かに引き抜いて創口は見えないようにすること どうでもいい事を喋るなプライベートに干渉するな裏切るなら近付くな言えない言葉を言わない…
不幸を沢山積んだ取り返しのつかない一人よがりの言葉を沢山浴びた 言えなかった言葉が堆肥になって心がぶくぶく肥ってそれが脅しの眼になって存在しない他人の声になって 不幸は積み上がって喉はすぼまってそちら側には行かない という決別がまた私の首を絞…
分かりあうための言葉でどんどん間違える自分の刺し傷を見せるつもりはないけれど不格好な逆立ちをするからそれは見て欲しいわたしは、と喋り始めたら少しは声になる伝えたい言葉をどんどん間違えてもわたしは、と喋り始めたら多少はやり直せる教科書的な問…
私が誓いを立てている間 君は歓談していたんだろうかそれを思うと報われぬ距離をはかる 君との距離をはかっている 言ってはいけないことというのを言った制限された時間で いつも巧みに喋るから私は圧倒されるだけ 距離ははからないどう転んでも 埋め合わせ…
糸を漬けた水が腐っていくそれは銃でそれは祈りでそれは日々の暮らし 一人よがりには バチが当たるから綺麗でないイメージも 寄り添ってはくれないから 懺悔で私じゃない人の苦しみを見に行く遠くまで 思えるだけ 遠くまで あったはずの食事とか紙とペンとか…
音に惑わされて気付かないうちにはぐれた暗く湿った夜の森で一人しょわ しょわ しょわ しょわ足もとの腐った葉を踏む 都会の灯りでは影が無かった枝の隙間から枝の隙間からこぼれてくるそれでも影は無いまっとう まっとう まっとう まっとう熊が私を食べにく…
連絡網は ある 弓はいつも 引いている集中 集中 週末のシミュレイション レクリエイション欠けていく月のドラマ は 語らずしていい具合で縛られた 二十四時間 の 使い方 六分割弓は常に引いて ギリギリで 考え事は 禁止星座の具合で すれ違っても 自己主張は…
写真の中の生卵は腐らないし黄金の炒飯にもならない音のない世界で 言語の核は強い光を放ついつもそれを食べたいと思っているいつもそれを食べたいと思っている事象に逆らって 嘘をつくなという教えはあってもいいが騙しても良いと教えられたか 四角く切り取…
やあ終わるね終わるねという会話をなんのためらいもなく交わして奇妙な音頭で祝杯をあげる夜ごと静まるのに終電だけが賑やかで細い月は口をつぐんだまま笑っている 聖書を片手に麻酔科の部長が入ってくる私たちは私たちのささやかな問題について話し合う俗悪…
半熟の目玉焼きつくる半熟のおんな窓を半分閉めて後ろめたいことでもあるように光から隠れて食べる 半透明の心HBの鉛筆すりガラスに爪を立てた響きを反省する夜半フォークを立てると黄身が流れ出すフォークが流れる君が立っている 必然的な片割れではなくあ…
肩の革張りの重みをまもろうとするごとくかたくなに腕をこばんだ口下手を夜ごとに恥じて鼻へ抜けていくアルコールの香り誤魔化しがきかないんだろう底から噴き出してくる欲望を運動機能が落ちたふるえる右手の先でする する する とペンのうねり一秒ごとに展…
新世界に神は必要ない神は簿記を始めたことし人魚から初めての政治家が誕生したがメディアに煽られ自らヒレを切り落とした私たちが東京に旅行したのはその頃で姉は動物園で熊を嫌がって虎を見たその夜薬膳鍋を食し私たちは浄化の術を学んだが「どうせすぐ月…
まぶたに手を置いてじんわりとその筋肉がほぐれる後頭葉ではまだ花見をしているような騒ぎが続いているが黒いお面の小人が一人ずつカーテンをひく係で 左右からわたしの脳内を走って前頭葉まで暗幕をかけ始める 現実ことばによってわたしは世界と微妙な距離…
カゼ菌が喉頭蓋の上をさわさわうごく息をするたび 声門が開くたび気道に滑り込み私は驚く顔を真っ赤にして 目を見開いて咳き込む しんでしまう と思うこのまま咳が続いたら 息も出来ない身もだえしながら 弱い自分をのろうこんな思いをしているはずではなか…
救急外来に運ばれた急性アルコール中毒の患者はカーテンに向かって唾を吐きちらす患者の飲酒量はビール中ジョッキ十杯で致死量の半分にも満たない足りなかったねと師長が毒を吐く私は師長が好きだった 年を言うといつも若いねと言われた二十歳から働いていれ…
八月三十一日を前にわたしは失恋したのだったそういう告白をわたしはツイッターでしてなに食わぬ顔で揺れるジェリー状カラフルソーダの写真を添付した 本当は待っても待ってもわたしの順番は来なかったのだ公式ホームページの写真を加工して誰かのレビューを…
聞こえていたのに返事をしなかったとおい海の底から、頑張ろうは今こそだのに痛々しいから、始めから頑張ろうなどと叫ばなくても良かったのにだから返事をしなかった 飛行機の切り取られた両翼を想像した絶望のすぐそばに希望が住んでいる穏やかな水などはな…
夏がどんなふうに過ぎていっても私たちには関係がないねからし色の明るい夜のなかでふたり乗りの自転車が風を切っていく中肉中背のたおやかな背中後ろからだまって肩に手を置いてみる彼がわずかにぴくりと動く(私はこの人の背中が好きだ) 丸の内の駅まで運…
昨日の今ごろはたった今始まる手術のタイムアウト予想手術時間は、という問いに十二時間だという執刀医の言葉に私たちは唾をのんだ きっと助かる、と多くのサインから希望をつないだ私たちは拙い看護師で上を見ればきりがなかったそれでも二人で任せられた夜…
朝は予定帳を書いて昼は反省文を書くでは夕方は夕方は陶酔、またはロマンチズム食べても食べても満たされないぽっかり空いた胃の中に子どもみたいに雲の味を想像しては行きとどまらない不安で唾がのぼるそこへ行けば詩ができるという喫茶店には迷った末に行…
夏はよる君と動物と触れ合って、火照った夕べ梅の炭酸でまかなう 足首の疲れとハイリスクハイリターンの当直と天秤にかける 人には人の乳酸菌人には人の文脈があり外れたらケッコンできないじゃあまたねってそのまたなんか来ないことを知っている十五分に一…
医者の手が頭蓋骨にふれる。割れ物を扱うように、注意深くその骨弁を脳へあてがう。 鮮烈なイメージを遺すには、詩では足りない。 ―君だったのか。夢に鯨をしのび込ませたのは?
患者の標本をつくる部屋をさばき室をと呼ぶ。排水溝は数年分の血液が溜まっていて、きみは手が荒れるから掃除したくないと言う。
医者が二人、ソファのある部屋に入ってくる。私が淹れたコーヒーを飲みながら、二人は映画の話などをしている。
沖縄みやげのビールを見つからないように隠した。冷凍庫で風がねむっている。